音楽からはじまる。

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「オペラを鑑賞する文化」は根付かないのか?

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本日は、オペラの話

このテーマを取り上げたきっかけ

私は高校生の頃から声楽の友人が多かったので、よく伴奏を頼まれました。今でも当日弾いた作品も大好きなものが多いですし、バロックオペラからヴェリズモ*1、そして近現代のものまで、とても興味があります。

ただ、視野というのは本当に狭くて、声楽の友人に囲まれていると「音楽やっている人はオペラが好き」と思い込んで過ごしてきました。それは結構、最近までの話。私は頭を撃ち抜かれたかの如く、院生時代にその「音楽やってる人はオペラが好き」という、根拠のない考え方が大きく覆されます。音楽専攻の学生でも「オペラ嫌い」の人がかなり多い。では、それはどうしてなのだろうか?と考えてみました。

岡田暁生氏は、「馴染めない人のための注釈」として「浪費性」「儀礼性」「予定調和性」の三つの項目に分けて言及しています。*2

結局のところ、バロックオペラの時代から宮廷における催しものとして、「贅沢」「豪華絢爛さ」みたいなものが主軸となっていて、貴族たちからブルジョワジーたちが劇場に足を運ぶことになっても「社交場」としての役割が多く、音楽や舞台・演技を楽しむ、ましてや芸術性を感じとるといったものまで到達していなかったということが挙げられています。確かに分かりやすい例で言えば、ヘンデルの「Ombra mai fú」は今でも有名で、コンサートピースとしては演奏される機会がありますが、オペラ「セルセ」として上演されることは、ほとんど、というより、全くと言ってもいいほどありません。


Ombra Mai Fu Cécilia Bartoli

実際にオペラを鑑賞させると…

現在、私は講義でオペラについて取り上げることが多いのですが、生徒や学生が「なぜ映画を見るように、内容にしか興味が出づらいのか?」ということをいつも思っていました。それが上述したようなバロックオペラではなく、ヴェルディ作品やビゼーカルメン」でさえも。なのでいつも出てくる感想は「なんで同じ歌詞ばっかり繰り返すのだろうか?」ということ。それはオペラ(音楽)だからであるし、演出もつくでしょ…云々…という説明をしても納得いかない様子。実はそこに含みがあり、楽しみの一つであるのに、それを感じとることができない。つまりは音楽作品の一つであるオペラを鑑賞しているのではなくて、ストーリー性を持ったものを鑑賞しているに過ぎず、そこにたまたま音楽が付いていた、という感覚が鑑賞者から拭えない限り、この問題は解決できないのだなと思いました。

魔笛」からみた”体験が鑑賞を深める”という仮説

今、「魔笛」を研究対象にしていますが、やはりモーツァルトだと思わされることが何度もあります。話としては「寓話」なのだけど、そこに対する登場人物への音楽表現とキャラクター性の一致には素晴らしいものがあります。こんなこと、私が改めて書くまでもありませんが、書いてしまいました。魔笛の中で「ストーリーのつじつまを合わせよう」なんて思ったら、現代では特に「?」だらけでしょう。しかしそこに持つ音楽に焦点を当てたら、独唱曲だけでなく、重唱、合唱の効果も強く持ち合わせています。

なので小学校で見るオペラの中では「魔笛」が多いようですが(きっと教科書にリコーダーで「なんてきれいな鈴の音」を吹くようになっているからかもしれません?)あまり子どもだと、あのオペラを見ても「面白い人がいた」くらいの印象しか残らないかと思います。


Mozart The Magic Flute 6 Das klinget so herrlich Monostatos dancing

(2分くらいから観てください)

でも、そうした体験が必要なのではないかな…と思うのです。なぜ、そうなのか?

冒頭に書いたように、私はオペラの曲を多く伴奏してきました。オペラ全幕も何度も伴奏経験をしてきました。なのでオペラの魅力に取り憑かれたのだと思います。

オペラはもしかしたら「体験したからこそ魅力を感じられる」代表格かもしれません。音楽体験では、一部分でもいいから、自分が演奏に参加すれば楽しさを感じられる。リコーダー演奏でも、少し歌うのも、ピアノ伴奏でもいい。オーケストラに乗れたら最高。演出、大道具、小道具、衣装、照明、プロンプター…稽古に参加した人たち、携わった人たちは、自分たちで作り上げる喜びを、おそらくどの角度からも感じられるものなのだと思います。だからもしかしたら、小学校でのリコーダー演奏が、魔笛の鑑賞に生きてくるのかもしれません。断片でしかありませんが、そうした積み重ねの体験が、大規模な音楽作品、オペラに馴染む近道なのではないかと思うようになりました。

魔笛については思うところがたくさんあるのですが、長文になったので、また後日改めて。

*1:「真実主義」といわれるジャンル。プッチーニを始め、レオンカヴァッロ「道化師」マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」などの作品を示す

*2:岡田暁生(2001)『オペラの運命』pp.21-39.

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